ホテル、旅館、貸別荘等の宿泊事業において、投資家としてオーナーの役割に徹するのか、それとも自社で運営まで行うのか。儲かるなら自社で運営するのも良いがリスクに見合うのか、そんな悩みをお持ちの経営者もいらっしゃるかと思います。この記事ではホテルを所有した場合と、経営した場合の収益性につき、具体的なケースを基に比較したみます。
事例に出しているのは、このサイトで取扱いの多い、戸建てスタイルの貸別荘バケーションレンタル(以下「ホテル」と表記)を想定しました。
直営した場合の収支、オーナーとして賃料収入を得た場合の収支を、それぞれ比較しています。
ホテルオーナーとして建物を貸し出そうと判断されている方も、直営の収支を把握する事は参考になりますので、ぜひ最後までお付き合いください。
ホテルを経営した場合の収支
■ホテル経営の主な経費項目
・食材費
経費の中で占める割合の多い食材費。
利用者の満足を左右する重要なテーマですので慎重な検討が必要です。
最近はスマートチェックインシステムを導入、食事提供しないホテルもありますが、食事提供を行わないホテルが、最低業績ラインの1棟当たり年商1000万円を超えることはほぼ不可能であり、収支が低下するケースが大半です。
ただし、客室が数百あるならともかく、1棟から数棟のホテルの場合、現地で調理スタッフを雇用し、大きな厨房設備をもって食事提供をしても収支が悪化するばかりか、常に人の問題に悩まされ、安定した運営が行えません。
当社の場合なら、本部のセントラルキッチンで半完成品を調理、各施設に冷凍品で納品、ホテルでは解凍、盛り付けと最終工程のみを扱う体制を取っています。
当社のようなセントラルキッチンが無い場合は、フリーの料理人と契約してケータリングサービスを提供する、近隣の飲食店と提携して食事提供する、BBQメニューを提供するなどの代替策が必要です。
効率的な食事提供体制が確立できて、人件費を抑えることが出来るなら、食材原価を50%に設定、食事の面で大きく差別化できるでしょう。(飲食店の食材費は30%程度です)
・リネン費
高単価の宿泊料、女性や子連れファミリーを安定的に集客するためには、リネンは一定レベルの水準(コスト)が必要です。
都市部と比べ、リゾート地は競争が少ないためか、リネン費は高くなる傾向にあり、当社の事例では売上比4%~6%ほどになるケースが多いです。
シーツやバスタオル、歯ブラシ、シャンプーなど1人当たり1000円~1500円程度で予算組します。
単価が10万円を超えるような高級ラグジュアリー業態ですと、1名当たり4000円~5000円で予算組をするケースもあります。
・水道光熱費
水道代、電気代、ガス代です。
よく省エネ家電等が言われますが、照明やエアコンに電気代がそれほどかかることはありません。水道光熱費の算定は、稼働した日数に、それぞれの概算単価をかけて算出しています。
気を付けないといけないのは、サウナの電気代、温水プールのガス代、温泉旅館のボイラーなど、差別化、高級化のために付加価値を付けた場合には、多額のランニングコストを負担することになります。当社の高級ヴィラのプライベートサウナの場合、1泊2,000円程度の電気代がかかっています。
特に温泉旅館の水道光熱費は経営の根幹に関わります。言い方は悪いですが、素人が思いつきで手を出すにはハードルが高いことをご理解ください。
・通信費
Wi-Fiは標準装備が当然になっています。インターネットの通信費が必要になります。
・施設管理費
夜間に無人運営する場合、機械警備の導入が必要です。また電気設備の保安管理費用、防犯カメラ設置、利用の費用。
月額はそれぞれ高くはありませんが、年間でみるとそれなりの金額になります。
・修繕費、保守費
消防設備や浄化槽については毎年の法定点検が義務つけられており検査費用がかかります。
ホテルはたくさんの方が利用するため、破損したり、設備に修理が必要になります。修繕費用は毎年、一定額を予算化する必要があります。ペンキ塗りや草むしりも必要ですが、これらは外注せず、自分達で済ませると安上がりです。
・人件費
基本的にホテルは営業時間が長いため、シフト制を組むことになります。
時差出勤や定休日を設けるなどの工夫で効率化やスタッフの負担軽減を検討する必要があります。
当社の貸別荘バケーションレンタル業態なら、売上比10%~20%を目安としています。
ホテルが人件費を適性にコントロールするなら、スタッフのマルチタスク化はポイントです。
通常、正社員とパートアルバイトで運用するのですが、正社員=接客業務、パートアルバイト=清掃業務といった役割を分けず、正社員も接客から客室清掃、トイレ掃除に草刈りまで、全ての業務を担わせることです。
リゾート施設は繁忙期と閑散期に差が出ることは否めず、閑散期は正社員だけで運営するくらいで良いでしょうし、もし複数施設を運営するなら、閑散施設から繁忙施設へスタッフを臨時で派遣する事も検討します。
清掃を外注する施設もありますが、清掃会社から出てくる見積額がいかに高額か、自分達で清掃すれば一目瞭然です。
無人運営を検討される場合は、エリアによっては認められない地域もあるので注意が必要です。無人OKでも、緊急駆けつけ10分等のルールがあります。旅館業の営業許可を扱う保健所に早めに相談、確認に行きましょう。
・リース費用・減価償却費
家具、家電、送迎車等をリースする場合はリース料が必要です。
自己資金で購入する場合は、減価償却費を計上します。
管理棟に厨房設備やレジなどを整備した場合も同様に、リース料、もしくは減価償却費を見込む必要があります。
・支払手数料
90%以上の方がカード決済をしますので、カードの手数料負担が発生します。手数料はカード会社や契約内容により変動しますが、およそ3~4%程度かかります。
こちらが望んでいなくても、必ずかかってくる経費です。年間トータルでみると、かなりのインパクトです。
・集客サイトの手数料やHP管理費
楽天やじゃらん等の国内予約サイトは10~12%の手数料が相場です。
更にAirbnbやBooking.comなどの海外OTAを利用すると15%~20%の手数料に、キャンペーンを追加申込をすれば最大50%の手数料とか、信じられないレベルでとられます。こうなると一体誰のために経営しているのか、分からなくなりますので、全てを自社でというのは現実的でないにせよ、自社サイトからの予約比率を高める努力はホテル経営の最重要課題です。
自社サイトを運営すれば、サーバー費、予約システム、サイトコントローラー、PMSのクラウド利用料が月に1万円以上は必要になってきます。
・車両購入費
駅から送迎をする場合、送迎車の購入が必要となります。
送迎車を持てば、ランニングコストとしてガソリン代や車検費用を車輌維持費として見込んでおく必要があります。
・消耗備品費
食器やトイレットペーパー等の日用品、清掃用具や洗剤、事務用品などがかかります。
・求人広告費
人材募集に関する広告費。ホテル場合、慢性的な人手不足感があり、また予期せぬ退職もあります。求人広告費は毎月一定額を見込んでおいても過分ではありません。
・ゴミ処理費
事業用ゴミ回収業者に依頼する必要があります。リネン同様に競争相手の少ない地方へ行くほどに割高になりますのでバカにできません。
毎月の経費を抑える上では、企画段階で無駄を省くことが大切です。
車とガソリンの関係のように、何かを購入する場合、購入費用だけでなく、必ずランニングコストがかります。
そこに設備がある限り、ずっと経費がかかるので、本当にそれが必要なのか、シビアに検討しましょう。
過剰投資にならないように注意が必要なのは、管理棟の整備費用です。
広い事務所に各人1台ずつ机とスペースを確保すれば、それに伴い事務用品やパソコン、電話など、全て1つずつ必要になり、それに光熱費や消耗品費が紐づきます。
集客やサービスに影響を与えない投資は、無駄遣いという認識を持ちましょう。
■ホテルの業績指標
ホテルの営業収入は「客室単価(ADR)×稼働率(OCC)」で決まります。
ADRは1泊当りの平均室料です。客単価×客数で決まります。
一方、稼働率は客室に営業日に何日予約が入ったかで計算します。1年365日のうち200日予約が入れば稼働率は54.8%です。
都市部のビジネスホテルの場合は、稼働率が70~80%程度となりますが、地方のリゾートホテルの場合、冬や平日に予約が埋まるとは考えにくく、年間稼働率はおよそ40~60%です。これは営業努力で何ともなる事はなく、オーシャンビューの貸別荘に冬の平日の予約が入るか考えれば明らかです。
稼働率が低いリゾートホテルの収入は、客室単価(ADR)で決まります。
客室単価を上げるには、客単価をあげるか、1室の宿泊人数を増やすかのいずれかになります。
食事提供をしない限り、客単価も稼働率も上がらないです。
当社が富士五湖で運営する貸別荘バケーションレンタルの場合、1棟当りの収入は約2,000万円程度、平均3~3.5名の方が宿泊されます。10万円は高額に思われるかもしれませんが、5人で泊まれば客単価は2万円。当社の貸別荘バケーションレンタルの場合、6名のグループにも利用いただける仕様も企画します。
1棟1,000万円の収入に対し、食材原価や人件費を適切にコントロール、GOP比率(営業総利益率)は最低20%以上を目指したいものです。1棟2,000万円を超えるような高級貸別荘なら、GOP比率30~40%を目指します。
リースなどを組み合わせ初期投資を抑えた上でGOP比率を40%確保できれば、5年程度のキャッシュフローで投資回収も可能です。
一般のホテルや旅館などのROI(利回り)と比較して高い数字であり、私どもが薦める貸別荘バケーションレンタルの経営は、投資回収の早い事業といえます。
ホテルを所有した場合の収支
オーナーとして建物賃貸借契約を行う場合、家賃収入から火災保険料や租税公課、修繕費の経費を引いたものが、NOI(純収益)となり、貸別荘バケーションレンタルの場合、投資額に占めるNOIの割合(利回り)が6~9%程度になるとみられます。
運営側の視点でみれば、営業収入の20%程度が賃料負担の安全水準です。
運営側の営業収入と、所有側のNOI、還元利回り、投資額の関係は次のように考えられます。
- 1棟の営業収入が1,000万円、NOI200万円、期待利回り7%なら、約2,850万円の投資額
- 営業収入が2000万円、NOI400万円、期待利回り7%なら、約5,714万円の投資額
- 投資額が8,000万円、期待利回り7%、NOI560万円なら、営業収入2,000万円の運営側の賃料負担は28%
- 投資額が1億円、期待利回り9%、NOI900万円なら、賃料負担率20%の施設に必要な営業収入は4,500万円
投資額が大きくなりすぎると、賃料負担が重くなるため、企画段階から神経を使う費目です。
所有者からすれば、たくさんお金をかけたのだから、予約もたくさん入るだろうと考えたい気持ちは分かりますが、宿泊業の客室単価は、一定水準を超えると販売動向が極端に悪化することが多く、投資額がそのまま営業収入に連動しないのが難しい所です。
当社の貸別荘バケーションレンタルでは、1棟当たり月25万円~60万円が目安の賃料となります。
貸別荘バケーションレンタルの開業はロケーションの確保がポイントです。
物件によって初期投資額が変動、立地やロケーションにより運営収支が変わります。
当社では、宿泊施設を全国で直営していることを強みに、リゾート不動産物件の開発を行っており、1棟当たり売上2000万円を越える高級貸別荘をこれまでも開発してきました。
検討されている立地、計画されている土地があれば、プランニングの上、初期投資額と収支モデルのシミュレーションを行っています。
ぜひ、お気軽にご相談ください。
