リゾート不動産の法規制、知らないと大損するポイント

リゾート事業に参入する企業にとって、関係する法律や許認可については注意が必要です。
法規制がネックになって、営業許可が取れず開業できない、工事費が大幅に増加し計画見直しを迫られるケースは決して少なくありません。
厄介なのは、その筋の専門家(不動産業者、建設業者、開発コンサル、一級建築士等)でも、リゾート地の開発に限っては経験が乏しく、上手くプロジェクトを進められないという話も伺います。知らないでは済まされないリゾート不動産について、注意すべき重要ポイントをまとめました。

この記事の目次

既存建物の改築は建築確認に注意

建築基準法で問題になりやすいのは、既存建物を改築して宿泊施設を開業するケースです。
個人の別荘を改修して宿泊施設にする場合、用途が変更されることになり、必要な基準や設備が整っていない可能性が考えられ追加工事が必要になるケースが出てきます。
既存建物の改築において、建築確認が不要かどうかは、用途地域や対象面積、改修工事の内容によりケースバイケースで判断されますので、改築だから不要と自分勝手に判断して、例えば建築確認が必要であるのに接道要件を満たしておらず再建築不可物件だった等、後になって分かるようでは、プロジェクト自体が頓挫します。

土地は“本当に”接道要件を満たしているか

建築基準法では、建物の敷地は幅4m以上の道路に2m以上接していなければならないと定めています。これを「接道義務」といいます。不動産を扱う方なら誰もが知っているルールです。
リゾート地では、この接道義務を果たしていない土地に出くわします。
ポイントは、道路はあくまで「建築基準法の道路」でないといけないという事です。
建築基準法の道路に該当しない道としては農道、林道、里道、河川や海岸の堤防道路、港湾施設道路が挙げられます。建築基準法の道路に該当しない道に接する土地には、原則として建物の新築や増改築が不可となります。手を出さないことが賢明です。
隣に旅館が建っている、メジャーで測ったら4m以上あった等、見た目で判断せず、実際に役所に足を運んで確認することが必要です。

エライ先生に頼んでも出来ない土地はある

市街化調整区域では原則、建物を建てることが出来ません。また住専地域等、旅館業の許可をとることが出来ない用途地域があります。
これら宿泊施設が出来ない土地の提案を、不動産屋さんから持ち込まれる事が頻繁にあるので注意してください。
神奈川県の湘南、静岡県の富士山の裾野、愛知県の知多半島、埼玉県の秩父方面等は、都市リゾートに向きそうなエリアですが、同時に市街化調整区域が多くあるエリアです。
また古い街並みが残る京都の中心地や東山エリア、東京23区内の青山や原宿等の表通りから中に入った閑静なエリア等は住専地域が多く、宿泊業が開業できません。
こちらも、近所にホテルがあるから等の勝手な判断をせずに、事前に役所に確認を取って下さい。
よく「地元の政治家の先生を知っているから大丈夫」等と言われる方がいますが、私の経験上、大丈夫になった事例はありません。

オシャレなデザインをしたいなら自然公園法は外す

都市部で不動産を取り扱っている限り、まず出てこないであろう自然公園法、美しい日本の景観を守るために意味深い法律ですが、事業者にとっては大変厄介な法律です。
特に第1種や第2種の特別地域に該当する場合、事前に環境事務所より許可を受ける必要がありますが、デザイン、屋根の形状や壁の色、敷地辺りの建物の数など、大変厳しい規制を受け、プロジェクトの収益性にも影響を及ぼします。
この先生はセンスに優れ、自然と調和したデザインをしてくれると言った所で、行政の担当者はセンスではなく、ルールに添っているかどうかで判断します。オシャレで奇抜なデザインの建物を建てないなら、自然公園法の対象から外れて建てることです。

土砂災害特別警戒区域は歴史が証明している

土砂災害警戒区域と土砂災害特別警戒区域がありますが、とりわけ土砂災害特別警戒区域(通称:レッドゾーン)は、土砂災害が発生した場合、建築物に損壊が生じ住民の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる区域です。
土砂災害特別警戒区域については、開発工事や建築物に関する整備条件が特別に定められていますが、それよりも何よりも、当地が当然に特別警戒区域として指定された過去の災害の歴史があるので、宿泊者と自社の安全を考えれば手を出さないことが賢明です。
洪水や高潮についても同様です。

開発行為はお金と時間がかかる

開発許可とは、開発行為を行なう際に必要とされる許可のことです。
市街化区域で1,000㎡以上、非線引き区域で3,000㎡以上、都市計画区域外で10,000㎡以上の土地において、宿泊施設の建築を目的とした区画形質の変更を行う場合、行政と事前協議の上で開発許可をとる必要があります。
開発許可は、排水施設や避難経路の確保、切り土や盛り土の安全確保など、土地の特徴によってはやる事、協議する行政の担当も多岐にわたり、事前協議から許可をとるまでには膨大な時間がかかる上に、開発行為の内容次第では予算を大幅に上回るコストがかかります。
初めてリゾート不動産に取り組まれる場合は、まずは無難に開発許可を避ける事が出来る物件から取り組むことをお薦めします。
そもそも建築工事より土木工事はお金がかかります。
仮に開発許可が不要であっても、開発(土地の区画形質の変更)にかかる工事はお金がかかります。一概に言えませんが、建築費と同額、それ以上のコストがかかる事を頭に入れておきましょう。

農地は転用申請が必要だが転用出来ない農地もある

候補地が農地の指定を受けている場合、転用申請が必要で土地の面積によっては相当の期間を要する場合もあります。ゴールデンウィークや夏休みのハイシーズン前に開業を計画している場合、タイミングを逸するリスクがないか事前調査が必要です。
また農業振興地域(青地)に設定されている場合は、おおむね10年以上は農業利用されるべき土地として厳しく制限されています。ほぼ事業を行うのは不可能です。仮に農振除外申請が可能としても、許可を得るまでに相当な時間を要します。余程の理由が無ければ、その土地での事業化は見送った方が良いでしょう。

旅館業の営業許可は緊急時の駆けつけ

リゾート地で宿泊施設を運営するなら、旅館業法の営業許可が必要です。
民泊の届出を行い、旅館業の営業許可をとらない事も考えられますが、民泊は営業日数(年180日)の制限を受ける上、ブランディングが難しく、高単価の施設を運営することが困難です。収益性を追求するなら旅館業の営業許可です。
旅館業の営業許可には、「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」がありますが、ヴィラや貸別荘経営なら「簡易宿所」の営業許可を取得することが一般的です。
「簡易宿所」の許可取得の基準には、客室床面積1人当たり3.3㎡以上、適当な規模や数の入浴設備やトイレ、適当な換気、採光、照明、防湿、排水の設備、玄関帳場(フロント)の設置等がありますが、一番のポイントはフロントの設置です。
最近は古民家や貸別荘など戸建てタイプの施設の増加もあり、設置要件は緩和されています。自治体によっては無人運営も認めていますが、その場合でも夜間等の緊急時に10分から20分以内に駆けつけることが基準になります。
近隣に町のない大自然の中で開業すると、この駆けつけ基準をクリアできない場合があります。

ここまでリゾート不動産を開発する場合に、考えられる代表的な法規制と典型的なケースをご紹介しました。
しかしこれらはほんの一例で、土地が10通りあれば、かかる規制や対応策も10通り、一筋縄ではいきません。

大切なのは一次情報(不動産屋さんから出てきた物件概要)に書かれていることを鵜呑みにせず、直接、行政に連絡を取って確認することです。行政は質問された事について、回答する責任がありますので、根気強く一つずつ相談しましょう。
この調査や相談は信頼できる外部業者に頼むことも出来ますが、不動産屋さんはマニアックな自然公園法や都市計画法については素人であること、一級建築士さんもリゾート物件に不慣れな上、国家資格者である手前、行政から言われる事に真正直である(結果、工事コストが上がる)ので、リゾート開発に慣れた専門事業者に依頼することをお薦めします。
我々も直営50施設以上のリゾート開発、300を超えるプロジェクトのコンサルティング実績を踏まえ、実務に長けた専門事業者としてお力になれますので、お気軽にお問い合わせください。

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