中小零細オーナー企業の事業承継において、後継者に対する相続税や贈与税の負担を軽減することは、非常に重要な経営上の課題です。
事業承継時、自社株の評価額によっては数億、数千万円の税金が課されることもあります。
仮に業績が芳しくない場合でも、保有している土地などの含み資産が評価されると、予想以上の相続税が発生する訳です。
自社株の評価額を引き下げる方法として、不動産の購入が有効な手段の一つと考えられます。以下で詳しく見ていきましょう。
事業承継における自社株の評価方法
非上場企業の株価評価は、類似業種比準方式と純資産価額方式がありますが、中小零細オーナー企業の場合は、純資産価額方式がより適用されやすいでしょう。
【純資産価額方式】
会社の純資産の大きさに基づいて株価を評価する方法です。
具体的には、「会社が解散した場合、株主にどれだけの金額を返還できるか」という観点から算出されます。この方式は、特に同族経営の中小企業や非上場企業でよく使用されます。
不動産購入を活用した自社株評価引き下げの方法
不動産購入は、純資産価額方式に基づく株価評価を引き下げる有効な手段です。
一般的に不動産の相続税評価額は市場価格より低くなる可能性がありますので、例えば現金で2億円を保有している企業が、2億円の土地を購入すると相続税の評価額となる路線価は市場価格のおよそ80%であるため1億6000万円となり、その分だけ相続税計算の評価額を下げることができます。また建物を建てた場合、建物は建築費用の約70%での算定となります。
現金で保持している場合と比べ、不動産は低い評価額がつきやすく、相続、事業承継対策になるという特徴があります。
不動産購入の注意点とリスク管理
ただし、不動産購入には注意が必要です。
事業に全く無関係な不動産や収益が見込めない不動産を購入した場合、株価引き下げ効果は得られるものの、事業の運営に悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、事業拡大に必要な不動産や、賃貸用不動産を選ぶことが重要です。
また不動産の取得後3年間は、路線価でなく時価で評価されてしまいます。
自社株の引き下げ目的で不動産を活用する場合には、事業承継を行う3年以上前に不動産を購入しておきましょう。
不動産購入による株価引き下げの具体例
不動産購入による自社株の評価引き下げには、いくつか方法があります。
代表的なものに賃貸用不動産を購入する方法があります。
賃貸用不動産を購入、純資産の評価額を下げ、結果的に自社株の評価も引き下げることが可能です。
賃貸用不動産購入のメリット
賃貸用不動産を購入した場合、土地は貸家建付地の評価で約20%、建物は貸家評価で30%の評価減を受けることができます。さらに賃貸用不動産からの賃料収入も見込めるため、株価引き下げにも役立つだけでなく、事業に利益をもたらす事が期待できます。
リゾート不動産が相続対策としても最適な理由
ここまで賃貸用不動産を購入した場合の株価引き下げ効果について話して参りましたが、その中でも、リゾート不動産が特に効果的と考える理由を次に記します。
●都心の不動産と比べ土地が安いリゾート不動産は、全体に占める建物費の比率が大きく、より多くの評価減を受けやすい
●観光需要に湧くリゾート不動産の場合、相続税の評価額となる路線価と市場取引価格の間に大きな乖離が発生しやすく、より多くの評価減を受けやすい
●国内成長分野に投資し、実質利回り5~10%が見込めるリゾート不動産は、事業としても魅力的であり、かつ社員の福利厚生制度としての役割も期待できる
まとめ
不動産を活用することで、事業承継時に発生する相続税や贈与税の負担を軽減し、同時に自社株の評価を引き下げることが可能です。賃貸用不動産、特にリゾート不動産を購入することで、事業の成長にも寄与し、資産の移転を有利に進めることができます。ただし購入する不動産の選定やタイミングには慎重を期し、専門家と相談しながら進めることが重要です。
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