リゾート不動産の宿泊運営、旅館業許可 vs 民泊新法!最適なのはどっち?

リゾート宿泊施設の運営を始めるには、「旅館業法に基づく営業許可」と「住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届出」の2つの方法があり、それぞれに特徴や規制が異なります。

「年間を通じて安定した運営をしたい」「低コストで手軽に始めたい」など、事業の目的や物件の条件によって最適な選択肢が変わります。

本記事では、それぞれのメリット・デメリットを比較し、御社の物件に適した運営方法が理解できるよう解説します。

この記事の目次

旅館業の営業許可

旅館業法の概要

宿泊業を営むには、旅館業法による「旅館業の営業許可」が必要です。
旅館業法に定める旅館業とは、「施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」を指しており、具体的には以下の点が判断基準です。

①宿泊料を徴収している
②社会性がある(広く一般に募集を行い、不特定多数を宿泊させる)
③継続反復性がある(宿泊募集を継続的に行っている)
④生活の本拠でない

旅館業の営業種別と取得要件

旅館業には「ホテル・旅館営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の3つの営業種別があり、それぞれ営業許可を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

旅館ホテル営業簡易宿所営業下宿営業
宿泊期間1日単位1日単位1ヶ月以上
最低客室数なしなし
1客室の床面積7㎡以上33㎡以上
玄関帳場の設置義務ありなし
建築基準法ホテル旅館ホテル旅館下宿
消防法旅館ホテル
(5項イ)
旅館ホテル
(5項イ)
下宿
(5項ロ)

リゾート施設の場合、「旅館・ホテル営業」か「簡易宿所」の営業許可を取ることになりますが、最も大きな違いは「玄関帳場(フロントのこと)」の設置の有無です。

自治体によっては、簡易宿所でもフロント設置を義務付けるケースもありますし、旅館・ホテルでも緊急時対応や宿泊者名簿の記載等により、フロント設置を不要としているので、その境界は曖昧です。今後は本来の簡易宿所の目的から照らすと、家族や友人等のグループに貸し切り提供するヴィラやコテージ、貸別荘等は、多数人共用の構造設備の設置が不要である旅館・ホテル営業の許可申請が流れとなりそうです。

旅館業の営業許可申請が必要なケース

たまに物件を紹介してくれる不動産業者から、「この物件は前のオーナーが旅館業の許可をとっているので(新たに)申請は要りません」と、びっくりするような事を言われる時がありますが、全くの誤解であり、旅館業法の理解不足です。
リゾート施設を新たに行うなら、下記を含めたほとんどの場合で、旅館業の営業許可が必要です。

・新しく建築物を建て、宿泊施設を営業する場合
・既存の許可営業施設で、建築延べ面積の50%以上にわたる増改築、移転等をする場合
・既存の許可営業施設で、営業者が変わる場合
・既存の建築物(用途が宿泊業以外のもの)の用途を変更して、宿泊施設を営業する場合
・営業種別を変更する場合(例 旅館営業→簡易宿所営業)

旅館業の営業許可申請は誰がどこへ出すのか

営業許可を申請するのは、宿泊施設を経営する事業者です。施設の所有者として、事業者に建物を貸し出す場合は、許可申請は施設の経営を行う事業者ですし、経営は自社で行うが運営面は外部委託する場合は、許可申請は自社で行います。
営業許可は地域の保健所に申請します。

旅館業の営業許可申請手続きの流れ

手続きの流れを大まかに書くと、「事前相談」→「住民説明等」→「学校等への意見照会」→「建築確認申請」→「消防法令適合通知書の交付申請」→「旅館業の営業許可申請」となります。

住民説明は、必ず求める自治体もあれば、任意の自治体もあります。
施設から概ね100m以内の学校、児童福祉施設に対して、保健所が意見照会を行います。
既存建物の100㎡を超える部分を宿泊施設に用途変更する場合、宿泊施設を新築する場合は、建築確認申請の手続きが必要となります。旅館業の営業許可を受けるには、建築確認申請により交付される「検査済証」と、施設が消防法令に適合することの証明に消防署が交付する「消防法令適合通知書」が必要です。
検査済証と消防法令適合通知書を入手後、旅館業の営業許可申請を保健所に提出します。
申請を受けた保健所は、施設完成後、申請内容と相異がないか、監視員が現地を実地調査(立会い必要)、申請から概ね2週間程度(自治体により差がある)で営業許可が出ます。

つまり建物竣工後、営業を開始するまでに2週間程度の期間が必要です。余裕をもったスケジューリングを行うと共に、営業の機会損失とならないよう、工事の工程について目を光らせておきましょう。

旅館業営業許可のメリット・デメリット

メリット

〇年間(365日)を通じて営業が可能
〇信頼性が高く、OTA(じゃらんや楽天トラベルなど)への掲載が可能
〇民泊よりも高単価の料金設定が可能であり、収益性の高い運営が可能

デメリット

×設備要件や法規制をクリアする必要があり、許可取得のハードルが高い
×旅館業の営業許可が取れない用途地域がある
×許可取得までに時間がかかる
×設備要件や法規制をクリアするため想定外の費用がかかる場合がある

民泊新法(住宅宿泊事業法)の届出

民泊新法(住宅宿泊事業法)の概要

民泊新法ができた背景には、インバウンド需要拡大に伴う宿泊施設不足の解消と、深刻化する空き家問題、増え続ける違法民泊への対応です。民泊施設の法制度として、2017年に住宅宿泊事業法が成立しました。一定の条件を満たせば、旅館業の営業許可不要で、届出のみで合法的に宿泊施設を運営できるようになりました。

民泊新法が既定する民泊施設とは

民泊新法が規定する民泊施設とは次の通りです。

・年間営業日数が180日以下
・残りの年の過半は居住用に使われる

したがって、ヴィラや貸別荘でも、上記の基準をクリアしていれば民泊新法の適用対象となります。「民泊」と謳っているから旅館業の許可が要らない、という訳ではありませんので注意が必要です。

民泊新法が適用された施設は、用途を住宅と位置付けることにより、旅館業法の許可を受けずに旅館業を営むことが可能となります。
それに伴い、旅館業に関連する建築基準法や都市計画法等の規制の対象外となります。

民泊新法の届出要件と旅館業営業許可との違い

民泊新法届出旅館業営業許可
法律住宅宿泊事業法旅館業法
年間営業日数180日365日
建築基準法の扱い住宅ホテル・旅館
住専地域での営業不可
消防法の扱い原則、旅館、ホテル、宿泊所その他これに類するもの(5項イ)旅館、ホテル、宿泊所その他これに類するもの(5項イ)

営業日数を年間180日に縛ることで、旅館業の規制を緩和し、民泊を適法に営む選択肢が広がりました。

営業が180日を超えた場合の罰則規定は?

民泊新法において、180日を超えて営業しても罰則はありません。
では安心か?というと、むしろそうではなく、180日を超える営業は旅館業法にもとづく営業許可を得る必要があり、この場合、無許可で旅館業を運営したことによる旅館業法違反として、6ヵ月以下の懲役もしくは3万円以下の罰金が科されます。
また都道府県知事への報告で、営業日数について虚偽報告を行うと、こちらは民泊新法にもとづき30万円以下の罰金が科されます。

民泊新法の届出

都道府県知事への届出が必要です。
届出をした宿泊事業者は、次のような業務が義務付けられます。

・宿泊者の衛生の確保・・・床面積に応じた宿泊者数の制限、部屋の清掃等
・宿泊者の安全の確保・・・非常用照明設備の設置、避難経路の表示等
・宿泊者名簿の備え付け・・・宿泊者名簿の備え付けと提出
・周辺環境への配慮・・・騒音防止のための配慮、宿泊者への説明等
・苦情への対応・・・周辺住民からの苦情への対応等

民泊新法のメリット・デメリット

メリット

〇旅館業の営業許可よりも手続きが簡単で、すぐに運営を開始できる
〇設備基準が緩やかで、改修コストが抑えられる
〇空き家やセカンドハウスを活用しやすい

デメリット

×営業日数が年間180日までに制限されるので収益機会が限られます
× OTA(じゃらんや楽天トラベル等)の掲載に制約がかかります
×自治体毎にルールがあり、条例で厳しく規制されるケースもあります

民泊新法の届出を活用することで、法規制が厳しく、これまで旅館業を営むことができなかった鎌倉や京都などの文化エリアに建つ邸宅を活用した宿泊業、瀬戸内国際芸術祭やワールドカップのような大きなイベントの開催期間中にあわせて一時的に宿泊業を行うケース、従来は建築確認がおりないような古民家を活用した宿泊業も可能となりました。

事業者にとってどちらの方法が良いか?

旅館業の営業許可が向いている事業者

〇本格的な宿泊施設として長期的に運営したい
〇年間を通して安定的に収益を確保したい
〇ホテル・旅館ブランドを確立し、OTAで広く集客したい

リゾート地や温泉地で宿泊施設を運営したい事業者、投資家なら、やはり旅館業の営業許可をとって、年間を通じて安定した収益を得ることが望ましいと思われます。

民泊新法の届出が向いている事業者

〇既存の空き家やセカンドハウスを活用したい
〇法規制の面で旅館業の営業許可取得が難しい
〇年間180日以内でも十分に利益が出るし、それで問題ない
〇投資額を抑えた事業を行いたい

まとめ

旅館業の営業許可は、設備要件や手続きのハードルが高いが、年間を通じて安定した運営が可能で、収益性も高くなる傾向にあります。
民泊新法の届出は、簡単に始められる利点がありますが、年間180日の制限があるため、安定した収益を確保するのが難しい傾向にあります。
実際の所、弊社が運営するリゾート地のヴィラ(旅館業営業許可)ですと、年間売上が2,000万円を超えるのに対し、民泊施設の年間売上は300~500万円が一般的な水準です。
どちらを選ぶかは、運営目的や不動産の条件、収益モデルに応じて決めるのが最適ですが、

〇長期的かつ本格的な宿泊業 → 旅館業の営業許可
〇副業・低コストで短期間の宿泊運営 → 民泊新法の届出
〇法規制上、旅館業の営業許可がとれない → 民泊新法の届出

が、基本的な流れでしょう。
自社の投資方針や事業計画に応じた選択をすることが重要です。

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